2025年3回目のセミナーは「最新技術(AI/Blockchain)を活用したECの可能性と東南アジア・中東エリアのECトレンド」 (登壇者:Tempura technologies 上田剛大氏)

一般社団法人日本越境EC協会(JACCA)は2月27日、Tempura technologiesで共同創業者兼COOを務める上田剛大氏を招き、セミナーを開催しました。上田COOに東南アジア・中東の現地状況とブロックチェーンを活用した越境ECの可能性などについて語ってもらいました。個人的に興味深かったのは「今後日本のECにおいて『ステーブルコイン』がインバウンドを集めるきっかけになる」という話でした。今回は少人数での開催になりましたが、少人数ゆえ、セミナー中に「この点はどうなの?」「どうすればうまくいくの?」など活発な議論が交わされ、大変有意義なセミナーになりました!

セミナーでは、主に①ブロックチェーンを活用した仮想通貨決済②ブロックチェーンを活用した越境ECの可能性③東南アジアにおけるECのトレンドと参入方法④中東エリアのECのトレンドと参入方法ーーなどについて、説明してもらいました。

皆さんは仮想通貨についてどのようなイメージを持ってますでしょうか?「難しそう」「いかがわしい」「いまいちよくわからない」「なんとなくネガティブなイメージがある」など、良い印象を持っている人は少ないのではないでしょうか?

実際に上田COOも「日本において、まだまだ一般的に仮想通貨の認知度は広まっていないし、良い認識を持っている人は少ないと思っています」と現状を話しました。

その中で、上田COOは「ステーブルコイン」に大きな期待を寄せています。「ステーブルコイン」が今後EC業界において、シェアを高める可能性があると予測しています。

「ステーブルコインとは法定通貨や金などの価格と連動するように設計された仮想通貨のこと。価格変動が小さいのが特徴で、決済手段としても利用することができます。仮想通貨だと、昨日の価格が1000円で、今日の価格が500円と、価格の幅が大きくなってしまうことが多いのですが、『ステーブルコイン』ではそれが起きづらいのです。手数料も低く、国際送金でも送金が一瞬で終わります」(上田COO)。

海外の仮想通貨事例を見ても、Tesla、Shopify、PayPalなどが実装しており、海外での利用が拡大しています。まずは海外で仮想通貨の利用シーンが広がり、次にインバウンドからの利用、そして日本国内で日本人による利用が推進していくと予測しています。

実際に日本の決済代行会社は仮想通貨を新たな決済として導入することを考えているのでしょうか?

「恐らくですが、どうするか検討中の段階なのだと思います。基本はやりたがらないと思います。なぜなら上がり幅、下り幅が大きいからです。今後の市況感なども踏まえ、検討している段階ではないでしょうか」(同)とみています。

次に国別のトレンドを見ていきましょう。東南アジアの最新トレンドはどうなっているのでしょうか?上田COOは市場攻略のためにはいくつもの鍵があるといいます。

「まず一つ目はハラール認証。二つ目はチャットコマース。三つ目はSNSの攻略が重要になります。チャットコマースは日本ではZEALSが似たようなサービスを提供していますが、ベトナムでは会話をしながら商品を購入してもらえる動線が整っています。また、最近では、SNSの台頭もあり、現地の若者が海外の文化を知ることが増えています。ベトナムでもK-POPが流行っており、コスメも韓国コスメが人気になっています。『とりあえず気になるから触ってみよう』と韓国コスメを陳列している店舗に訪れるケースも目立っています」(同)と説明します。

続いて、中東のトレンドについて。中東は①政府支援②高い可処分所得③スマートフォンの浸透④若者の人口比率の増加ーーなどにより、さらにECは拡大していくといいます。

実際に売れる商品については、中東で女性が着用必須のモデストファッション(肌の露出を控えな衣服)、ハラール対応商品、ヘアケア商品などが人気だといいます。

「個人的に意外だったのがヘアケア商品。確かに女性は顔を覆うように洋服を着用します。もちろん頭も覆います。そのため、髪の毛をケアするヘアケア商品に注目が集まっているのだろうなと推察しています」(同)。

日本企業の海外進出事例として、資生堂、ヨックモック、I-neなどが挙げられます。

「まず大前提に中東では、日本商品の人気が高いです。ヨックモックも日本人のサラリーマンがドバイに商談に行くとき、お土産品として持参したことがきっかけです。それでもらった人がヨックモックを食べて、おいしさに感動して、徐々に人気が広がっていきました。また、日本のアニメも中東で人気が高いです。実際にサウジアラビアの王族が日本に訪れ、名探偵コナンに感動し、昨今サウジアラビアでは名探偵コナンを見ることができます。日本製品は質が高い。お菓子やエンタメなど、日本商品も中東で受け入れてもらえる可能性は高いです」(同)。

ドバイは特に高所得者層と低所得層の差が広いです。高所得者層の獲得については、

「高所得者層は独自のコミュニティーもあり、なかなかそこに食い込むことは難しいのが現状です」(同)と吐露しました。

中東での認知拡大方法はどのように行えばいいのでしょうか?上田COOは日本と中東も方法に大差はないと考察しています。

「『Amazon』や『noon』などのECモールに出店し、その後、インフルエンサーマーケティングやデジタル広告を活用して、認知拡大に力を注いでいきます。オンラインだけでなく、オフラインにも進出して、販売場所を増やしていきます。基本的な戦略は日本と変わらない気がします。変わるのは費用感だけだと思います」(同)と推測します。

セミナー後には、いつも通りの懇親会も開催しました。少人数でしたが、少人数ゆえ、議論も活発的に行われました。

50人規模の懇親会だと、セミナー実施者と細かく会話することも難しいですが、この人数ですと、本当にさまざまなことを話すことができました。とても濃い時間を過ごすことができました!

JACCA第26回セミナー:ECMS ジャパン登壇「世界の動き × 越境EC物流 〜知っておきたい最新動向とこれからの方向性〜」 7月17日(木)18時から

JACCA第26回セミナーは、国際物流のプロフェッショナル、
ECMSジャパンの小松社長にご登壇いただき、
世界の動き x 越境EC物流について、お話しいただきます。
越境ECに携わる事業者であれば知っておくべき、抑えておくべきポイントです。