2025年6回目のセミナーはJETRO登壇「JAPAN STOREプログラム」と「米国関税関連」 (登壇者:JETRO 志賀大祐氏・松田かなえ氏)
2025年6回目となるセミナーでは、JETRO(日本貿易振興機構)から志賀大祐氏と松田かなえ氏をお招きして、近年JETROが力を入れている「JAPAN STOREプログラム」と「米国関税関連」についてご説明頂きました!「Amazon」と連携した越境ECプログラム「JAPAN STORE」の具体的な支援内容から成功実績、そして事業者が直面する「関税」という大きな壁への対策まで、貴重な情報を語って頂きました。
JETROがつなぐ、日本と世界のマーケット
まず、松田氏がJETROの役割と越境EC支援の全体像について説明しました。
松田氏:「本日はご参加いただきありがとうございます。JETROは経済産業省所管の独立行政法人で、『日本の世界経済をつなぐ』というミッションのもと、国内外120以上の拠点を活かし、現地のニーズを調査しながら皆さまの海外展開をサポートしています」

JETROの支援は多岐にわたりますが、特に近年力を入れているのがデジタルツールを活用した海外展開、すなわち「越境EC」です。その中核をなすのが、Amazonと連携したプログラム「JAPAN STORE」だといいます。
「Amazon」出店の第一歩を強力サポート「JAPAN STORE」の仕組み
「JAPAN STORE」とは具体的にどのようなプログラムなのでしょうか。
松田氏:「『JAPAN STORE』は、Amazonのプラットフォーム上に開設された、日本商品だけを集めた専門ページのことです。ここに商品を掲載することで、海外の消費者へアプローチする仕組みになっています。初心者の方向けの出店セミナーから、アカウント開設、個別の相談まで、出店のあらゆる段階でサポートを提供しています」

単に場所を提供するだけでなく、出店から運営、売り上げ拡大までを一気通貫で支援する体制が整えられています。
初心者から経験者まで。手厚い個別プログラムで売り上げ拡大へ
さらに、今年度からはより個別性の高い2つの新プログラムが新設され、支援体制が強化されました。
松田氏:「1つ目は『スタートダッシュ成功パック』です。これは、まだ売り上げが出ていない初心者の方が、初めて売り上げを出すまでをマンツーマンで支援するプログラムのこと。Amazonの活用法や広告戦略などを約5回のメニューで丁寧にお伝えします。
2つ目は『売り上げ拡大トレーニングプログラム』です。すでに出店されている企業さまが抱える『ブランディング』や『商品ページ改善』といった個別の課題に対し、専門家が最適な解決策を提案・実行する、より踏み込んだ内容になっています」

これらのプログラムに加え、JETROが費用を負担してGoogle広告やインフルエンサーマーケティングを実施し、「JAPAN STORE」自体の認知度向上も図っているとのこと。事業者一人一人のステージに合わせた手厚いサポートが最大の強みと言えるでしょう。
成功事例とデータで見る「JAPAN STORE」の実力
松田氏:「成功事例として、伝統工芸品である山形鋳物の企業さまがいらっしゃいます。当初は苦戦されていましたが、商品写真の改善やブランディングを徹底した結果、高価格帯でも戦えるようになり、しっかりと利益を確保できるようになったとご報告いただきました」
データを見ると、アメリカではファッションや雑貨、イギリスではキッチン用品が人気カテゴリとなっており、10ドル以下の安価な商品から高価格帯の工芸品まで、幅広い商品にチャンスがあることが分かります。
越境ECの壁「米国関税」もJETROが徹底サポート
続いて志賀氏が、多くの事業者が頭を悩ませる「関税」について解説しました。
志賀氏:「いわゆるトランプ関税をはじめ、米国の関税制度は非常に複雑です。特定の国に対するもの、特定の商品に対するもの、そして全世界一律のものなど、複数の種類が絡み合っています。
JETROでは、こうした複雑な制度を解説したレポートの作成や、いつでも相談できる専門窓口を設けるなど、情報提供にも力を入れています。トラブルシューティングのサポート体制も強化しており、事業者の皆様が安心して挑戦できる環境を整えています」

Amazon以外もカバーする「越境ECビジネスパートナー」制度
最後に、Amazon以外のプラットフォームへの展開も視野に入れた、より幅広い支援制度が紹介されました。
松田氏:「『越境ECビジネスパートナー』制度では、企業様が抱える課題を登録いただくと、JETROが審査の上で最適な専門パートナーを無料でご紹介します。各分野のプロフェッショナルと連携し、より専門的な課題解決をサポートする仕組みです」

トランプ関税への見立ては?
次に皆さん気になるトランプ関税について討論しました。まず、現在の米中間の関税をめぐる協議の状況について説明してもらいました。
志賀氏: 「現状、トランプ氏と直接的な協議を行うのが難しい状況で、本格的な交渉の場は11月に開催されるAPEC(アジア太平洋経済協力)まで持ち越される可能性が高いと見ています」

トランプ氏の交渉スタイルにはどのような特徴があるのか?
志賀氏: 「彼は元々ビジネスマンであり、1対1の二者間交渉で相手から譲歩を引き出すことを非常に得意としています。一方で、多くの国が参加する多国間(マルチ)での交渉はあまり得意ではないようです。そのため、各国を個別に呼び出し、『2人きりで話そう』と持ちかけて圧力をかけ、有利な条件を引き出すという手法を好みます。このスタイルは今後も続くと考えられます」

具体的な関税の内容について、少し複雑で分かりにくい部分がある
志賀氏: 「現在の関税はいくつかの種類が複雑に組み合わさっています。まず基本となるのが、全世界一律で10%を課す『ベースライン関税』です。そして、これに上乗せする形で、国ごとに『相互関税』が設定されます。
中国に関しては、トランプ政権の第1期からすでに対象品目に対して高い関税が課されており、今回さらに追加されるという、いわば『二重構造』になっています。一見、全ての国に同じ関税が課せられるように見えますが、国や品目によって状況は大きく異なるのです」

日本の主要産業である自動車業界への影響は?
志賀氏: 「自動車業界への影響は甚大です。特に中国で生産された自動車部品や完成車には高い関税が課せられています。例えば、アメリカへ乗用車を輸出する場合、元々の関税率2.5%に今回25%が上乗せされ、合計27.5%もの関税がかかります。さらに、ピックアップトラックなどは元々の関税率が25%と高いため、そこに25%が加わり、合計50%という非常に高い関税率になります。
最近の貿易統計を見ると、日本の自動車メーカーは輸出台数を維持するために、この関税分を自社の利益を削ることで吸収している状況が見受けられます。つまり、利益なしで輸出している状態です。しかし、このような『ただ働き』の状態は長くは続きません。数ヶ月以内には、アメリカ国内での販売価格に転嫁せざるを得なくなるでしょう」
今後の注目点は?
志賀氏:「 関税政策と並行して、『デミニミス』という制度の動向にも注意が必要です。これは、一定額以下(アメリカでは800ドル)の輸入品を免税にする制度ですが、トランプ氏は関税逃れを防ぐために、この制度の適用を停止しようとしています。これが実現すれば、個人輸入や越境ECなどにも大きな影響が及ぶでしょう。
関税問題は、単なる貿易の話にとどまらず、各国の産業構造や私たちの消費生活にも直結する重要なテーマです。11月のAPECに向けて、各国の交渉の行方を注意深く見守る必要があります」

セミナー終了後には懇親会も開催しました!このくらいの人数だと皆さん全員と話せて有意義な時間を過ごすことができたようです!

ご飯もおいしい!非常においしそうじゃないですか?


JACCAでは、毎月セミナーを開催しています!お気軽に皆さんご参加ください。
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特にTikTokなどショート動画が旬なので、どのようにして売っていくのか、とても貴重なご講演となります。