2025年8月のセミナーはアジアンブリッジ登壇「台湾とタイの越境EC、これまで100億円以上売ってきてみえたこと」(登壇者:阪根嘉苗氏)

一般社団法人日本越境EC協会は8月、台湾での越境ECで100億円以上の商品を売り上げたアジアンブリッジ株式会社の阪根嘉苗CEOをお呼びして、台湾とタイの越境ECについて語ってもらいました。

近年、国内市場の縮小やデジタル化の進展に伴い、多くの日本企業が海外EC(越境EC)や海外流通への展開を模索しています。しかし、言葉や文化の壁、法規制の違い、マーケティング手法の複雑さなど、海外進出には多くの課題が立ちはだかります。

特に台湾市場は、親日的な国民性や地理的近接性から、日本企業にとって魅力的なターゲットの一つですが、ここにも独自の課題が存在します。

今回は、これまでに台湾での越境ECで100億円以上の化粧品・健康食品・日用品を販売し、多くの日本企業の海外展開を支援してきた「アジアンブリッジ株式会社」のセミナー内容に基づき、台湾ECで成功するための実践的なノウハウを紹介します。


アジアンブリッジ株式会社とは?

アジアンブリッジは、「ブランドの国境を越えた流通の最大化に貢献するスペシャリスト」として、アジア市場における日本企業のD2C(Direct to Consumer)流通を強力に支援しています。

日本、台湾、タイに拠点を持ち、累計で100億円以上の流通額と100社以上の支援実績を誇ります。中小企業庁の「JAPANブランド育成支援等事業」の認定支援パートナーでもあり、その専門性は国からも認められています。

彼らの最大の強みは、商品企画から現地製造、貿易管理、在庫管理、PR、EC運用、販路開拓、小売店舗での販売まで、D2C流通サプライチェーンを一気通貫で最適化する体制です。これにより、アジア全域でブランド価値と供給効率を同時に高めることが可能になります。

当初はEC事業からスタートしましたが、グローバルフルフィルメントを基盤に、リアル店舗流通、マーケティング、サプライチェーンDX、グローバルライセンス事業へと多角的に事業を拡大。アジアにおける「ブランドの流通の最大化を一気通貫で支援できる」唯一無二の存在として、ビジネスの成長を支援しています。

最近では、実績のある株式会社MDとタッグを組み、自社ブランド化粧品「Frieage」を2025年3月に日本で提供開始。先日大阪で開催されたコスメフェスにも出展し、多くのインフルエンサーの注目を集めるなど、自社でもD2Cブランドを成功させるノウハウを蓄積しています。


日本企業が海外展開時に直面する3つの課題

国内でEC販売に積極的な中小規模の日本メーカーであっても、海外展開を検討する際には以下の3つの課題に直面し、結果的に多くの企業が販売開始に至らないケースが多いと言います。

  1. 海外の法規制がわからない:薬事法や食品衛生法など、日本とは異なる現地の法規制を理解し遵守することが困難。
  2. どのように現地プロモーションを行い販売拡大していくのかわからない:現地の消費者ニーズや文化に合わせたマーケティング戦略を立てるのが難しい。
  3. 海外の消費者対応ができるリソースがない:カスタマーサポートや返品対応など、現地語での対応体制を構築できない。

これらの課題を克服しない限り、海外ECでの成功は難しいでしょう。


90%以上の事業者が越境ECで月商100万円を超えられない理由

アジアンブリッジが支援してきた企業の年間売上の変化を見ると、海外EC市場の現実と成功の鍵が見えてきます。

7年前(支援初期)の年間売上構成では、驚くべきことに90.2%もの企業が年間1000万円以下でした。これは月商約83万円以下に相当し、月商100万円の壁を越えられない企業がほとんどであったことを示しています。当時の成功パターンは、主に「ほぼ越境ECのみで展開」し、「モール内SEOメインの広告運用」が中心でした。

しかし、2025年時点の年間売上構成(予測)では、年間1000万円以下の企業は9.1%に激減し、年間3001万円~1億円の企業が54.5%を占めるなど、大幅な改善が見られます。この変化を牽引したのは、「現地への輸入を行い、出せる販路にすべて出した」こと、そして「広告投資をしっかり行った」企業たちです。

このデータは、単なる越境ECだけでは頭打ちになり、現地への本格的な流通と積極的なマーケティング投資が成功の必須条件であることを明確に示しています。


海外流通の現状と越境ECの限界

グローバルでのB2C小売市場におけるEC化率は約24%ですが、これは主に中国が高い比率を引き上げている結果です。その他アジア各国ではEC化率が10%前後にとどまっており、オンライン販売のみでは不十分であるとアジアンブリッジは指摘します。

そのため、オフラインも含めた多角的な販売チャネルを持つプラットフォームが必要不可欠です。

例えば、台湾のドラッグストアの密度は、土地面積あたりで日本の約3倍もあります。これは、台湾においてオフライン店舗がいかに重要な販路であるかを示唆しています。

アジアンブリッジは、「PChome」「MOMO」「Shopee」主要ECモールから、「Watsons」「Cosmed」「Tomod’s」などのドラッグストア、新光三越のような百貨店、さらには中華航空の機内販売まで、あらゆるチャネルへの展開を支援しています。これにより、日本企業は最適な形で台湾市場に商品を届け、流通を最大化できるのです。


台湾における薬事法の日本との違い

海外展開において、現地の法規制、特に薬事法に関する理解は極めて重要です。台湾の化粧品や健康食品に関する規制は、日本と比較しても非常に厳格です。

化粧品広告でありながら「シミが改善した」「毛穴が引き締まった」「シワが消えた」といった具体的な効能効果を謳う表現や、医療行為に類する表現、誇大広告などが厳しく取り締まられています。違反した企業には罰金が科せられ、その内容は一般に公開されます。

さらに、PIF(Product Information File)制度が段階的に義務化されます。これは、化粧品の安全性・品質に関する詳細な情報をまとめた文書の作成・保管を製造業者・輸入業者に義務付けるもので、EUの制度を参考に、消費者の安全確保と市場管理強化のために導入されるものです。

PIFには、製品の基本情報、成分表、生産工場情報、安定性試験結果、効能効果評価情報など、16項目もの詳細な情報が必要とされます。また、この書類を作成し署名する「台湾化粧品安全性評価者」になるためには、医学・薬学系などの学位資格に加え、安全性評価に関する訓練課程の受講と試験合格が必須です。

こうした複雑で厳格な法規制に対応するためには、現地の法律に精通し、かつ実務経験を持つ専門家、つまりアジアンブリッジのような支援企業の存在が不可欠と言えるでしょう。


TikTokなどの縦型ショート動画の活用で、無名ブランドを初年度で3億円売るノウハウを公開

従来のマーケティングでは、FacebookやInstagramなどのプラットフォームで広告を配信し、リーチを広げるのが一般的でした。しかし、近年、特に若年層を中心に、コンテンツ消費の形が大きく変化しています。

アジアンブリッジは、自社ブランド「Frieage」の美容液において、TikTokのオーガニックアカウントのみで販売開始6ヶ月で1億円以上の売上を達成しました。この成功は、縦型ショート動画の持つ可能性を如実に示しています。

TikTokとYouTubeのユーザーあたりの平均視聴時間は年々増加しており、特にTikTokの勢いが顕著です。これは、人々が縦型ショート動画により多くの時間を費やすようになっていることを意味します。

TikTokと従来のSNSのアルゴリズムの違いが、この成功の鍵を握ります。
従来のSNSでは、投稿のリーチを伸ばすために「フォロワーの獲得」が大きな指標でした。しかし、TikTokでは、フォロワーがいなくても、コンテンツへの評価(視聴完了率、エンゲージメントなど)が直接リーチ数に結びつきやすいという特徴があります。つまり、質の高い面白いコンテンツであれば、フォロワー数に関わらず「バズる」可能性を秘めているのです。

このアルゴリズムの特性を活かせば、無名ブランドであっても初年度から3億円の売上を達成することも十分に可能です。重要なのは、現地のトレンドを捉え、ユーザーの心に響く縦型ショート動画コンテンツを制作し、継続的に発信することです。


結論:海外展開成功のための要点

アジアンブリッジの知見から導き出される、海外ECおよび海外流通を成功させるための結論は以下の通りです。

  1. 海外ECおよび海外流通は日本の3倍は難しいと認識する:国内と同じ感覚で進めては失敗します。課題の多さと複雑さを理解することが第一歩です。
  2. 知識がないと遠回りするので、経験や実績のある会社にアドバイスをもらう:特に法規制は変化が激しく、専門家のサポートが不可欠です。独学や手探りで進めるのはリスクが高すぎます。
  3. 現地の商習慣を研究し、日本の勝ちパターンをそのまま持ち込まない:現地の消費者の文化、購買行動、流通構造などを深く理解し、それに合わせた戦略を立てることが成功の鍵です。現地の成功事例を徹底的に研究しましょう。
  4. 海外販売はマーケティングとセットであり、トレンドを常に模索する:マーケティング手法は数年で移り変わります。常に最新のトレンドをキャッチアップし、柔軟に戦略を調整していく必要があります。
  5. 半年で一気にテストを行い、リスク覚悟で実行する:海外市場は変化が速く、機会損失を避けるためにも、短期間で効果検証と改善を繰り返すスピード感が重要です。「半年売って売れなかったら一生売れない」という覚悟で取り組みましょう。

JACCA第31回セミナー:JACCA&JECCICA共催12月セミナー 女性マーケティングの第一人者 日野さん登壇 女性はなぜ買うのか? & 世界第4位 2億7,000万人口のインドネシア TikTok Shopのリアル インドネシアのEC事情 成功するマーケティングとは? 12月19日(金)17時30分から

JACCA第31回セミナーは、JECCICA&JACCA共催12月セミナー 女性市場 × インドネシア市場 2026年の勝ち筋はここにある!