中国への越境ECを始めるには(執筆:JACCA 出口 允博)
こんにちは。出口です。
世界的に新型コロナ騒ぎが落ち着いてきて、いよいよ「コロナ明け」と言われるようになりました。
日本でも海外販路の開拓のための補助金などが出てきたり、そしてまたインバウンド需要の期待の高まりから、「越境EC始めたいけど、どうすれば良いんだろう…」という声がよく聞こえてくるようになりました。
先日、中小企業診断士の方々数十名の集まりで、越境ECに取り組むためには、という事でお話しをさせて頂きましたが、この集まりに限らず、まだまだ認知が足りてない気がして、私ども協会の活動についても、もっと活発に情報発信していかなければならないな、と再認識し、気持ちを引き締めたところです。 さて今回は越境ECと言えば!という事で、何といっても最大の貿易相手国である中国に対して越境ECを始めるためには、という事で、まずはざっくりと説明しようと思います。
中国への越境ECって…
中国への越境ECというと、いまだによく聞かれるのは、「日本のECサイトを中国語にすれば良いんでしょ?」という声です。
以前は日本にあるECサイトを中国語にして注文を受け、中国の購入者にEMSで送る、という事が行われていた時期がありましたが、今は中国語にするだけでは越境ECはできません。
2019年3月に、中国の中央政府により越境ECに関する法律が施行され、それ以降はEMSで送ってもほぼ相手に届かなくなりました。ヒドいなぁ…という声も聞かれましたが、よく考えてみれば購入した商品を関税や増置税(日本で言う消費税)を支払う事なく商品を販売できていた事がそもそもおかしかったわけです。
では、中国への越境ECは、どういう形で成り立っているのか?という事ですが、前提として中国では、政府が認めたECプラットフォームで越境EC事業が成立しています。
例えば有名なところでは天猫国際(T-Mall Global)や、京東国際(JD.com)など大手の越境ECプラットフォームから、最近ではSNS上で越境ECプラットフォームを構築し、販売できるようになりました。中でも抖音(中国のTikTok)や、微信(WeChat)などです。
こういったプラットフォームは、中国税関に事前に商品登録する事によって、円滑な通関ができるようになります。つまり前述のEMSで送っても届かない、という事がありません。
通関時に法律によって定められた税金を納付する仕組みになっているのです。
※越境ECによる税金の仕組みには、行郵税、または越境EC総合税という2つの種類があります。
直送モデルと保税モデル
次に、よく聞かれる、「直送モデル」とか「保税モデル」とか言われるものがありますが、つまりは、
- 日本から中国本土の購入者に直接届ける形態が直送モデル(BtoCモデル)
- 中国の保税倉庫に一定数の在庫を置き、注文の都度、保税倉庫から通関を通して購入者に届ける形態が保税モデル(BtoBtoCモデル)
と言われています。
直送モデルは日本から直接、中国の購入者に届けるわけですので、日本の側の意思決定にて色々な施策を決める事ができます。
一方で保税モデルでは、日本から見るといわゆる輸出と全く同じわけで、中国側に輸入者を置き、売買契約や委託販売契約を締結して、卸売するという事になり、どのような方法で販売するかは中国の輸入者側の意思によって決められます。
日本企業から見れば、BtoCモデルの方がやり易い、という事になります。何故なら売れた分だけ配送すれば良いわけで、余剰に在庫する必要はないし、いったん中国に輸出したのに保税倉庫で不良在庫になる事もありません。
しかしプラットフォームによっては、一定数の在庫を保税倉庫内に確保し、越境ECサイト上ではその在庫数だけが販売可能数量にできる、という制限があるプラットフォームがあります。 概ね大手のプラットフォームは、保税モデルを前提としたガイドラインに基づいてますので注意が必要です。
越境EC事業のスタートとしては、最初は直送モデルで行って、販売数量が増えたら保税モデルで、という形態がお勧め、という事になるわけですが、商品の認知度を上げるための販促施策と合わせて、どの越境ECプラットフォームを使っていくか、を熟慮して決めていくべきです。
直送モデルでは、物流事業者の選定がとても大切
越境ECの直送モデルでは、中国税関で輸送が止められて、結局どうにもならずに商品を破棄しなければならない、というケースがよくあります。
しっかりと事前に商品登録を済ませ、日本からの配送出荷時に、越境ECの法制度に則った形で出荷できていなければなりません。物流事業者の選定は、直送モデルで越境ECを行うために、最も重要だという事です。
商標問題について
付随する事ではありますが、越境ECであっても大変重要な事は、商標です。
実は日本以外の国では商標侵害の訴訟がとても多いんです。 中国もそうで、商標を持っていないと、ブランディングに成功して一気に売れるようになった時に、仮に別の誰かが商標を保有していたとすると、商標侵害で告訴されるリスクがあります。
なかなか分かり難いと思われたら、是非、当協会に問い合わせしてみて下さい。
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2024年もいろんな予測が当たったのですが、2025年はさらに混迷する1年になると思われます。
このため、国内ECと越境ECが今までどうだったかと今後どうなるかを、ECデータ分析に定評のある本谷知彦氏とECやオムニチャネルの業界の最前線の現場で業務を行っている川連一豊氏が、お話いたします。